4a 綰柳の花
 「綰柳」は古く中国の習慣で、旅立つ者が無事に還ってくることを祈って、別れ際に再会を期して柳を三本使って輪に結び、旅立つ者を送ったことが起源となったものである。これが後に、年始めに無事一年が過ごせるようにとの願いを込め、「一陽来復」の意をもって、お正月床の間に「結び柳」「綰柳」が挿けられるようになった。「綰」とは、たわめ曲げて輪にすることであり、この「綰柳」は「結び柳」のことを指すものである。また正月十五日には、「柳迎え」として、柳に紅白の小さなお餅をたくさん付けた「餅花」を飾り、その日の夕刻に柳を燃やして、餅をあぶって食すると若返るとも言われている。
 この「綰柳」の挿け方としては、二重切の掛花器を使い、先ず上口には大垂の柳三本を一つにまとめて、根元のほうを向こうから手前へと輪に結んで挿ける。これは三より一なるものに納まることを意味し、これを解けばまた三に帰ることとなる。すなわち「三即一也」「一即三也」を現すものである。一は二を生じ、そして二は三を生じ、また三は万物を生じる。太極より陰陽という両儀へと分かれ、そして両儀より三才に展開し、また三才より万物が生まれていく。一元的な根源の本質と森羅万象の現象を、この「綰柳」でもって現すものである。
 この「綰柳」は、垂れ下がる柳の長い枝に、永久なるものを尊ぶ。茶席の床では、床に接するまで柳の先端を大きく伸ばして挿けるが、未生の花としては、床と柳の間には「空」が必要である。つまり、柳の先端が床と直接に接点することはない。
 また長い柳をもって輪に結んで挿けるが、この柳は陰陽どちらに片寄ることのないようにする。柳に強い勢いのあることを禁じ、また勢い弱いことも禁じる。「綰柳」は中庸にして、長短の枝を取り合わせて挿けるものである。綰柳の輪は、太極にして本質である。そして三本の柳は万物万象の現象である。万物は輪より生じたものであることを勘考し、すべからく中庸にするものである。
 次に下口に挿ける椿は、開・半開・莟と五輪ほどの花に、「霜囲いの葉」と「挟葉」を備えて挿ける。この椿は白玉椿を用いるが、白玉椿がないときは色のついた椿を用いても構わない。
 また舟花器に挿けるときは、帆花として椿を使い、そして艫花として綰柳を挿ける。